復活、日本酒の熟成(古酒)
日本酒の歴史は約2500年と言われています。その日本酒の歴史の中で「日本酒の熟成酒(古酒)」が消えてしまったのはたった100年。その歴史的背景の一つとして明治時代「増石税」という蔵元にとっては大変厳しい税制度がありました。
造ったお酒は早く売って資金を回収しなければ、その年の増石税も払えないという厳しい税の制度から明治以前に尊ばれていた古酒の伝統も明治になり数年で消えてしまいました。
現在、ほとんどの皆さんは「日本酒は新酒で飲まなくてはならない」とか「時間がたつとす味が落ちる」などと思っていらっしゃいます。明治以前の価値観とは全く変わってしまった日本酒の物差しができてしまっているのが現実でしょう。
鎌倉時代にさかのぼれば、日蓮上人の手紙には「人の血を絞るが如くなる古酒」と書いてあるそうです。また江戸時代には「本朝食鑑」という食の事典の中で古酒の造り方に触れています。その中には「その三、四年を経た酒は、味が濃く香りが良くてもっとも佳なり、六、七年から十年になるものは、味は薄く気は厚め色は深濃で異香があってなお佳なり」とあります。
また同じく江戸時代の「訓蒙要言故事」にも「新酒は、頭ばかり酔う。熟成酒は、からだ全体が潤うように気持ち良く酔う」と書かれています。熟成酒は、飲んだ後の「酔い覚めの良さ」が特徴で、熟成した酒の身体に対する優しさは、最近の医学会でも報告されています。
また川柳集「誹風柳多留拾遺」には「三年酒 下戸の苦しむ口当たり」といった川柳もあり、意味は「下戸でも古酒の口当たりのよさについ飲み過ぎてしまう」それほど古酒は旨いということを歌っているのです。
これらのように日本酒の熟成(古酒)が認められないのは長い日本酒の歴史から振り返ると現代の100年間である。
戦後、酒税に関する規制が大幅に緩和され、そのため再び蔵元に日本酒を熟成させるという意欲がおこり、古酒が市場に出回るようになりました。
きっちりと温度と光を管理した日本酒は、色・味ともにゆっくりと成長し熟成された日本酒は色、香味、味等独特な個性を醸しだします。魅力ある逸品に育った古酒は、愛好家の間では「解脱」酒とよばれ珍重されてます。
ワイン同様その深い味わいを楽しんで頂き、熟成環境による色、香味、味の変化はその蔵元がいかに大切にお酒を管理してきたかがわかる一番のバロメータ。
多くの方があたり前だと思っている初々しい日本酒と違って、冷から燗まで幅広い温度帯で飲用でき中華料理や肉料理など味の濃い料理との相性が良いのも古酒の特徴です。こだわりの焼き肉屋さん・韓国料理屋さん・中華料理屋さんの日本酒といえば「古酒」を品揃えしているお店も増えてきました。
古酒の世界に目を向けると日本酒が「時を味わう飲み物」だと舌を通してわかっていただき違った美味しさの一面が見えて頂ければ幸いです。
そしてここにご紹介する吉村秀雄商店の熟成酒(古酒)が旨い秘密には
大正年間の蔵建造当初より、温度管理に注意を払った酒の熟成に力をいれておりました。
当時は、まだ珍しいコンクリート作りの半地下式貯蔵倉庫を蔵の地下設計しました。その設計は随所に工夫が凝らされておりました。例えば、貯蔵庫の天井部より直に4トンタンクが搬入できる設備を設けておりました。また、蔵の周囲に堀を設け農業用用水を取り込み、常に水を流して、気化熱で夏場の温度上昇を最小限する工夫がされており、冷えた空気が半地下上壁面に作られた換気窓に取り入れられれ、夏場でも地下室は20度以下に保たれるよう設計されておりました。
そこで時のゆりかごで育った古酒飲みくらべセットを一度お試しください。
【商品内容 各180ml×5銘柄】
昭和44年純米大吟醸 (ALC16度 日本酒度+3 酸度3 アミノ酸1.6)
昭和63年大吟醸 (ALC17度 日本酒度+3 酸度1.3 アミノ酸0.8)
平成元年大吟醸 (ALC15度 日本酒度+3 酸度1.2 アミノ酸0.6)
平成5年大吟醸 (ALC15度 日本酒度+5 酸度1.3 アミノ酸0.7)
平成12年大吟醸 (ALC15度 日本酒度+5 酸度1.3 アミノ酸0.6)