全国の地酒
お酒の熟成
お酒の熟成 お酒の《熟成》という言葉を耳にしたことはあると思います。熟成といっても実は二通りの熟成があると言われています。 ◆ひとつは、その液体を構成している成分同士が化学反応を起こし、新たな成分を生み出す化学的熟成。 ◆もうひとつは成分(アルコールと水などのなじみ)の分子レベルが安定化による物理的熟成。(言葉でいえばむずかしねぇ~。) 味覚といわれているものの大半を決めているのは、そのアルコール飲料に含まれている数々の味覚成分が組み合わせられた中で、ひとつの個性をもつひとつの味覚を造り出されているわけです。味覚成分が多ければ多いほどそれだけ味や香りに幅が広がり多彩な味覚を生み出しているともいえます。 但し味覚成分が多いほど、そのアルコール飲料は不安定要素が高いともいえる訳です。(常に成分同士が化学反応を起こすので良い意味も悪い意味も含めて変化しやすいということです。) ◆焼酎の味覚成分は約80種類前後といわれ、ワインの味覚成分は約600種類前後、日本酒の味覚成分は約1000種類前後といわれています。 ワイン、日本酒は、「果汁」「米」というひとつの素材から多彩な味覚が生まれているのも醸造酒であであるからです。またワイン、日本酒は、管理が難しいともいわれる要因は、前にも述べたように味覚成分が多いゆえに不安定要素が高いわけで、また、時を重ねることによって味覚成分同士が化学変化を起こし、新たな味覚成分を生み出し最初とは違う味覚にもなるゆえんです。 ◆では焼酎は、多彩な幅のある味覚を楽しむために原料となる「素材」や醸造酒を作る工程での「麹」を変えて、それぞれの個性を出しているともいえるわけです。 焼酎の製造工程にも、醸造酒を造るよく似た工程があり、そのできあがった醸造酒を蒸留機にかけ蒸留し不純物を少なくし、温度や空気による不安定要素の少ないアルコール飲料が造られていきます。(日本でありながら、清酒造りに適していない自然環境で焼酎造りが盛んになったのは、その自然環境と焼酎が不安定要素の少ないアルコール飲料であるゆえんでもあります。) ◆焼酎における熟成とは、少なからずにしても成分同士が化学反応を起こし、新たな成分を生み出し味覚の変化をもたらす化学的熟成も無きにしてはあらずでしょうが、それよりも焼酎における熟成については時間をかけたり外部的に何らかの方法で【成分の分子レベルの安定化による物理的熟成】の方が皆さんにとってはなじみのある感覚ではないでしょうか。 言葉でいうとむずかしかもしれませんが「まろやかになった」「口当たりが優しくなった」「鼻をツーンとつく刺激臭も弱くなった」という体験こそが焼酎の物理的熟成のひとつです。 ◆成分の分子レベルの安定化による物理的熟成といわれても、中々、理解できないとは思いますので簡単にご説明すると、下記の図のようにアルコールの分子の大きさは、水の分子の大きさより小さく、時間が経つにつれてアルコールの分子が水の分子と分子の隙間に入っていき、密度が高くなっていくような現象(器に大豆を入れ、そのあとに米をただ入れた時と振わせながら米を入れると米は大豆と大豆の間に入り込んでいき、密度が高くなっていくようなもの)をいいます。 ≪訂正≫ 下記図の表現が間違っています。水の分子の大きさを1とするとアルコールの分子の大きさは約12倍になります。時間をみつけて訂正いたします。m(_ _)mm(_ _)m ◆お酒ができた初期の頃や原酒に加水を施した頃は、図左のような感じだとお考えください。時間をかけたり振動を与えたりすることによりアルコールと水の安定化が進んでいくとされています。 《余談》よくある勘違い(日本酒・焼酎・ウイスキー・リキュール・スピリッツなどに色々な度数のお酒があるのは、飲みやすさと美味しさのバランスを調整するために原酒に加水をして度数調整されていて発酵の段階で目的の度数に造られているわけではございません。)。 またよく音楽を聞かせているお酒があったり、昔なら船で運んできたお酒が美味しいとされてきたのは、振動によるアルコールの安定化が促進されからです。現代ではさらに技術の発達からイオン交換という技法によってアルコールの安定化が図られたりしています。 ◆【成分の分子レベルの安定化による物理的熟成】がなされたお酒は、まず「まろやかになった」「口当たりが優しくなった」「鼻をツーンとつく刺激臭も弱くなった」という体験をしていただけはずです。そして、酔い心地や酔い冷めも違うことを体験されるはずです。 ◆実際には、新酒は頭ばかり酔っているような気がしますし、酔いが速くまわってきます。熟成酒はおだやかに体全体でホワッ~っと酔ってきます。同じ銘柄のウイスキーでも10年物と20年物だと口当たりやコクだけではなく、酔い心地の違い、酔い冷めの違いを体験された方も多いと思います。 ◆【成分の分子レベルの安定化による物理的熟成】がなされたお酒は、進んでいない若い焼酎より数十%はやく酔いがさめるという実験結果も出でいます。言われています。 ≪前割り≫ 特にウイスキーなどを水割りにした時に、グラスの中で虹のような何かうごめくような現象を見たこともあるかと思いますが、まさしくこれがアルコールの分子と水の分子がなじんでいない状態を物語っています。このような状態のお酒はどこかまとまりのない味覚として感じられます。 日本酒の世界でも原酒をタンクで保存されていたものを加水し瓶詰めされるようなお酒は「製造年月日から最低3ヶ月以上たったものを買え」といわれているのは、瓶詰め直後はアルコールの分子と水の分子がなじんでいない状態なので美味しくないということを物語っている名言なのです。 そのような処理をされているお酒・・・・新しい方が美味しいと思って買っていませんでしたか?????????? それ以外にも「酔い心地の良さ」「酔い冷めの良さ」も違いますよ~。体に優しいよ~。 そして、よく焼酎などは前割りをした方が美味しいと言われる要因も、味覚成分の結合ということではなくアルコールの分子と水の分子がなじんで少しでも「まろやかになった」「口当たりが優しくなった」「鼻をツーンとつく刺激臭も弱くなった」さらに「酔い心地の良さ」「酔い冷めの良さ」を求めた知恵なのです。 ◆こんな方法でアルコールの分子と水の分子の安定化を増進させてみては・・・・・ 分子レベルの安定化の一環で、冷蔵庫の壁にぴったしとつけておけば、冷蔵庫のコンプレッサーの振動により分子レベルの安定化の促進でさらに、まろやかさが増すとも言われています。 《新酒の頃(若い)のアルコール感と時を重ねたアルコール感の違い》 新酒(若い)の頃のアルコール感は、どこか角張っていてトゲがあるような感覚を受けます。けれど、時間を重ねるたびに段々と口当たりが優しくなるのはアルコールの分子と水の分子の安定化が増進されてきた証拠です。だから、たまたま飲んだお酒がどこか角張っていてトゲがあるような感覚を受けたからといって、その時にそのお酒を評価してしまうのはいささかどうなんでしょうか。もしかして、もう少し時間をかけたらお気に入りのお酒に変化するかもしれませんよ。 そして、熟成はりっぱな製造工程のひとつであるとお考えください。そしてさらに蔵元の多くは、適熟域で出荷されているわけではなく、未熟域で出荷されていることが多いことも事実です。(とはいっても蔵元は蔵元としての事情、熟成させるためのコスト・・・多彩な事情もあるわけです。) よってこだわりの酒屋さんやこだわりの愛飲家さん達は、その大切さを知っていて美味しく飲みたいゆえに自家熟成ということを自ら施しているのです。 |